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神戸地方裁判所 平成11年(行ウ)50号 判決 2000年12月05日

原告

小出眞治子

右訴訟代理人弁護士

片山文雄

被告

加古川市固定資産評価審査委員会

右代表者委員長

内海武俊

右訴訟代理人弁護士

荒尾幸三

主文

一  原告の請求を棄却する。

二  訴訟費用は原告の負担とする。

事実及び理由

第四 当裁判所の判断

一  〔証拠略〕によれば、次の事実が認められ、これを覆すに足りる証拠はない。

1  加古川市長は、以下のとおり、地方税法附則一七条の二第一項及び本件修正基準(乙一・平成九年八月五日付け自治省告示第一二六号「平成一〇年度又は平成一一年度における土地の価格に関する修正基準」)によって時点修正を行い、本件各土地を含む加古川市内の土地の平成一一年度の登録価格を決定した。

2  加古川市長は、右時点修正率を決めるに当たり、本件修正基準第3節三(一)(2)の「市町村長は、用途地区内の宅地の価格の下落状況に幅があり、用途地区ごとに修正率を適用することが不適当であると認める場合には、用途地区をさらに区分することができる。」との規定に則り、加古川市の普通商業地区(用途地区)内でも下落率にばらつきがあるという状況(例えば、普通商業地区内のJR加古川駅南側の商業地とその他の路線商業地とでは地価公示価格の下落率に格差がある。)を考慮し、用途地区をさらに区分した上、平成八年一月一日から平成一〇年七月一日までの加古川市内のすべての標準宅地(地価調査地と同一地を除く。)における価格の下落状況について不動産鑑定士による鑑定評価を求め、その結果得られた各標準宅地の下落率をもとにそれぞれの土地の路線価を時点修正し、評価額を算出した。

本件各土地の評価のもととなった正面路線標準宅地の不動産鑑定士による時点修正率は、平成八年一月一日から平成八年七月一日までが〇・九七〇(マイナス三パーセント)、平成八年七月一日から平成九年七月一日までが〇・九八〇(マイナス二パーセント)、平成九年七月一日から平成一〇年七月一日までが〇・九二〇(マイナス八パーセント)とされ、側方路線標準宅地の不動産鑑定士による時点修正率は、平成八年一月一日から平成八年七月一日まで、平成八年七月一日から平成九年七月一日まで及び平成九年七月一日から平成一〇年七月一日までのいずれも一・〇〇〇とされた。

なお、奥行価格補正率表については、加古川市長は、附表8を使用せず、附表1を使用した。

3(一)  本件各土地の、平成九年度(時点修正の基準日平成八年七月一日)、平成一〇年度(同平成九年七月一日)、平成一一年度(同平成一〇年七月一日)の各固定資産評価額の推移及び下落率は、別表V下段の表のとおりである(〔証拠略〕)。

(二)  加古川市の商業地の地価公示地は、加古川五―一ないし同五―五の五地点が設定されているが(なお、同五―一は平成一〇年一月一日から平成一一年一月一日までの間に選定替えされている。)、その地価公示価格の推移及び下落率は別表V上段の表のとおりである(〔証拠略〕)。

4(一)  本件各土地は、国道二五〇号線(明姫幹線)の幹線沿いにガンリンスタンド、パチンコ店、飲食店等の沿道サービス施設が建ち並ぶ路線商業地域に位置している(〔証拠略〕)。

(二)  加古川五―二は、JR加古川駅前の、小規模な低層小売店舗及び飲食店等が建ち並ぶ旧来よりの商業地域であって、別表Vのとおり、加古川市内の商業地として価格水準が最も高く(公示価格は平成九年一月一日五三万円、平成一〇年一月一日四七万三〇〇〇円、平成一一年一月一日四一万三〇〇〇円)、バブル時の地価高騰の反動で地価下落が著しく大きかった(平成九年から平成一一年の下落率二二・〇八パーセント、平成一〇年から平成一一年の下落率一二・六八パーセント)地域である。また、加古川五―四は、隣接地に郊外型大規模スーパーがあり、同スーパーの出店とともに周辺に小規模店舗等が展開するようになった商業地としては比較的新しい振興商業地域であって、価格水準は市内商業地としてはほぼ中庸であり、地価下落の状況は価格水準の高い地域と比較すれば低位で推移している(〔証拠略〕)。

二  右認定事実に基づき検討する。

1  前記一説示のとおり、加古川市長は、加古川市の普通商業地区(用途地区)内でも下落率にばらつきがあるという状況を考慮し、用途地区をさらに区分した上、平成八年一月一日から平成一〇年七月一日までの加古川市内のすべての標準宅地(地価調査地と同一地を除く。)における価格の下落状況について不動産鑑定士による鑑定評価を求め、その結果得られた各標準宅地の下落率をもとにそれぞれの土地の路線価を時点修正する等、本件修正基準に基づき本件各土地の評価額(本件各登録価格)を算定したものであって、違法とすべき点はなく、適法というべきである。したがって、本件各登録価格を是認した本件決定も適法ということになる。

2  原告は、加古川市の商業地の地価公示地のうち、評価が継続していて本件各土地と地域性が類似しているのは加古川五―二及び同五―四の二地点に限られるとした上、本件各土地の評価額の下落率(平成一〇年度の評価額からの単年下落率七・九四パーセント、平成九年度の評価額からの累計下落率九・二五パーセント)は、右二地点の平均下落率(平成一〇年から平成一一年までの平均単年下落率一〇・一パーセント、平成八年七月一日から平成一一年までの平均累計下落率一九・四パーセント)と比較して小さい旨主張する。

(一)  原告の右主張は、本件各土地と加古川五―二及び同五―四の類似性を前提とするものであるが、本件各土地と加古川五―二は、前記一4のとおり、本件各土地が、国道二五〇号線(明姫幹線)の幹線沿いにガンリンスタンド、パチンコ店、飲食店等の沿道サービス施設が建ち並ぶ路線商業地域に位置しているのに対し、加古川五―二は、JR加古川駅前の、小規模な低層小売店舗及び飲食店等が建ち並ぶ旧来よりの商業地域であって、別表Vのとおり、加古川市内の商業地として価格水準が最も高く(公示価格は平成九年一月一日五三万円、平成一〇年一月一日四七万三〇〇〇円、平成一一年一月一日四一万三〇〇〇円)、バブル時の地価高騰の反動で地価下落が著しく大きかった(平成九年から平成一一年の下落率二二・〇八パーセント、平成一〇年から平成一一年の下落率一二・六八パーセント)地域であって、同じ商業地域に属するとはいえ、明らかに地域性に相違がある。

(二)  また、前記一3(二)のとおり、加古川市の商業地の地価公示地で選定替えがされた加古川五―一を除いた、加古川五―二ないし同五―五のうち、右加古川五―二を除いた三地点の価格の下落率は、平成九年から平成一一年の下落率がそれぞれ一〇・三一パーセント、九・四六パーセント、八・三七パーセント(平均下落率九・三八パーセント)、平成一〇年から平成一一年の下落率がそれぞれ六・九パーセント、七・三七パーセント、六・一九パーセント(平均下落率六・八五パーセント)となっており、それに対して、本件各土地の評価額は、平成九年度(時点修正の基準日平成八年七月一日)から平成一一年度(同平成一〇年七月一日)の下落率が九・二五パーセント、平成一〇年度(同平成九年七月一日)から平成一一年度の下落率が七・九四パーセントであるから、加古川五―二を除いた同五―三ないし同五―五の各地価公示価格及び各下落率がほぼ同様の数値を示していることからすれば、加古川五―二は加古川市内の商業地の地価公示地の中において極めて特異な地域性を有することが明らかである。

(三)  したがって、本件各土地と加古川五―二との間に地域性における類似性は認められず、そして、加古川五―三ないし同五―五の各公示価格と本件各土地の評価額との間に下落率の顕著な差は見られず、同程度の下落率を示しているというべきであるから、本件各土地の評価額の下落率(平成一〇年度の評価額からの単年下落率七・九四パーセント、平成九年度の評価額からの累計下落率九・二五パーセント)が、加古川五―二と同五―四の二地点の平均下落率(平成一〇年から平成一一年までの平均単年下落率一〇・一パーセント、平成八年七月一日から平成一一年までの平均累計下落率一九・四パーセント)と比較して小さいからといって、加古川市長の本件各登録価格の決定及びこれを是認した本件決定が違法となるいわれはない。

3  また、原告は、加古川市長は、本件各土地の奥行価格補正率について、附表8を使用すべきところ、附表1を使用し、不当に高価に評価した旨主張するが、加古川市長が附表8を使用せず附表1を使用して本件各土地の評価をなしたことについて、原告はその違法であることの具体的な主張を何らしないし、加古川市長がその裁量の範囲を逸脱したとまで認めるに足りる証拠はない。

したがって、原告の右主張も採用することができない。

4  以上説示したところによれば、本件各土地の本件各登録価格の決定を是認した本件決定は適法なものということができる。

三  結論

以上によれば、本件決定の取消しを求める原告の請求は理由がないから棄却することとし、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 水野武 裁判官 中村哲 今井輝幸)

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